【みよしの部屋】
一
みよし君は妖精が見えるらしい。
こないだ、長々と自慢された。
クラスの中で一人ぼっちのみよし君のことだから、嘘だと思った。
「スチールウールみたいな頭しやがって」
って、
心の中で馬鹿にしてやった。
それでも博愛主義を志す僕は、
親切心から少しだけ話を聞いてあげることにした。
しかし、
なんの纏まりもない、まったく伝わらない話をされた。
あまりにも伝わってこなくて、人と喋ったことないのかって思った。
表情の表現も、可愛いの一辺倒だった。
あんまり可愛い可愛い言うから、クラスの美登里ちゃんより可愛いかって聞くと、
「くらべもんになんねーよ」
って。
いつからそんな口のきき方出来るようになったんだって思った。
勝手に同等に見てんじゃねーよ、このお花畑野郎
って。
美登里ちゃんが馬鹿にされたこともあって、悔しくって。
それで、勢いで行くことになった。
その嘘つきのみよしの部屋に。
二
旋風のような、波のうねりのような
――渦潮に点在する島々。
それぞれに住人、というよりも世捨て人であろうか。
その表現も違う、これは妖精である。
それもよく見る羽の生えた人面の蝶のような存在ではなく、
きのこの胞子のような。
うねうねと地を這って動くことしかできない、
かろうじて単細胞であることをを避けたような存在。
これを妖精という事ができるだろうか。
判断がつかない。
しかし見ていたい感情はある。
これらを知りたいとする欲もある。
では、ここに腰を据えてみよう。
存分にこの妖精を見物してやろう。
三
刑事さん、
こちらが夫の……、みよしの部屋になります。
ええ、ええ、それは勿論、
まだ遺品の整理も始めてない次第で。
何もやる気が起きませんでして、心が泡立ったままといいますか。
これから、どうしたらよいのでしょう……、
困り果ててしまって。
――!
刑事さん――?
刑事さん――!
おやめになって……!
えぇっ、私自身が……?
背徳に蒸れた双眸と……、肉欲を隠しきれない膝頭……?
でも、でも……!
ここは、逝ってしまった夫の
―― みよしの部屋、なのですよ……?
…… bungoooooさんの語り /// リンク↓/// ……
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