【この物語のあらすじ】

 

 

たとえば、あるグラフの中に生きていると考えてみよう。

 

   ぼうぐらふ

 

「パチ・パチ・パチ」 

 

 

3回瞬きをして4回目にあなたが目をあけると、そこはあたり一面の人。

 

ものすごい大行列の中だった。

 

 

 

真冬でさすような冷たい風がふいているのに、

 

密集した人から立ち上る体温に包まれて、ここは暖かい。

 

 

 

 

 

汗のにおいがする。

 

 

 

 

 

顔を左隣にそむけると、

 

ユウナちゃんのツンととがった、可愛いお鼻が見えた。

 

 

 

 

 

さやかりえユウナけい子

 

【 幼なじみの仲良しグループ。もうすぐ小学6年生。 】

 

【 4人は地域活動で、小さい時からこども演劇クラブに所属している。】

 

 

 

さやか  「超たのしみだよね~!ヘビックマ!!」

 

      「私30個入り買ってクラスの友達にもプレゼントするんだぁ~。」

 

 

けい子  「そうなの!?お金もってるねー。」

 

 

さやか  「おこづかい前借りしたからね;;;」

 

 

ユウナ  「さやかちゃんのそうゆう優しいとこ、ユウナ好きぃ。」

 

 

 

 

そうだ。

 

 

 

 

 

今日はみんなと一緒に、今大流行のヘビクマドーナツを買いにきたんだっけ。

 

それでこの行列にならんでるんだ。

 

 

 

 

 

 

りえ   「あれ、けい子ちゃんも30個のを買うって言ってなかったっけ?」

 

 

けい子 「私はこのためにお年玉貯金してたから、平気だよ~。」

 

 

さやか 「あぁー!!ずるーい、けい子ちゃん。意外と計画的。」

 

 

ユウナ 「うん、たしかに。」

 

 

けい子 「意外とってなによーぉ。」

 

 

 

 

 

ワイワイ。

 

 

 

 

 

みんなのカワイイ笑顔。楽しい時間。

 

 

 

 

 

でも私には、いつものように大好きなみんなの顔が見れない。

 

みんなのことは、好きだったはずなのに ………

 

 

 

 

私たち4人は、学校はバラバラだけどご近所に住んでいて、

 

小さい頃から同じ、子ども演劇クラブに入っている。

 

 

 

地元の町づくりの活動らしい。

 

わたしたちにとってはお金のいらない習い事みたいな感じで、

 

参加できるのは7才~12才まで。

 

 

 

 

役者だけじゃなくて、脚本とかの裏方仕事も、子どもたちでやるってゆうクラブ。

 

だから私たちは小さい頃から今まで、週に3回は顔をあわせてきた。

 

 

 

 

でも、

 

 

 

 

今年私たちが最年長になったこのクラブが今、存続の危機なのだ。

 

お金の問題みたい。

 

 

 

 

教えてくれている先生が、

 

 

「完成度なんかより、子どもたちだけでつくるってゆう経験のほうが大切だ。」

 

 

って考えの人だから、

 

 

コンクールで賞をとった事もないし、正直グダグダに終わってしまった年も多い。

 

 

 

 

今年の夏の大会で賞でもとれば、もしかしたらなんとかなるかもしれない。って

 

先生は言ってたけど………

 

 

 

そんな大事な年の劇団リーダーに、私は選ばれてしまったのだ。

 

 

 

 

私はこのクラブが大好きなので、来年からもなくならないでほしいって思った。

 

それに仲良しなみんなの力を合わせればなんとかなるはずだって。

 

 

 

4人で頑張ろうねって約束したばかりなのに、

 

 

 

 

 

リーダーになってから、私はみんなが分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

さやかちゃんは明るくて目立つし、いつもみんなを盛り上げてくれる。

 

 

でも最近は、同じ学校の友達と男の子の話題でギャーギャー騒いでるばっかり

 

で、なかなか練習をはじめてくれない。

 

 

 

 

けい子ちゃんは、今年は絶対主役になるんだって言って個人練習を一生懸命

 

やってくれてるんだけど、

 

 

他の人の練習の事は手伝ってもくれないし、後輩の悪口ばかり言ってる。

 

 

 

 

ユウナちゃんは衣装づくりが得意で優しい女の子なんだけど、

 

衣装が決まる段階になるまでは、なかなかクラブに顔を出してもくれない。

 

 

演技があまり上手な方じゃないのに全然練習してくれないし、

 

たまに来ても、いつもはじっこでボーっとしてるだけ。

 

 

 

 

 

 

みんなで頑張ろうねって約束したのに。

 

なんだかみんなの嫌いな面ばかり目についてしまう………

 

 

 

 

どうしてみんな分かってくれないんだろう。

 

 

 

 

 

それに知ってるんだ。

 

 

 

 

 

 

口うるさくなった私のことを、「最近ウザイよね」って、

 

みんなで陰口言ってる事。

 

 

 

 

 

………。

 

 

 

 

そんなこんなで。

 

 

 

 

 

今日みたいに仲良しなみんなで遊んでいても、昔みたいに楽しくない。

 

 

むしろみんなの顔を見てるだけで、ムカムカしてしまう。

 

こんな事ははじめてだ。とってもとっても悲しい。

 

 

 

 

 

あーあ。

 

ぶっちゃけ、ヘビクマドーナツなんてそんなに興味ないし、

 

こんなことなら家でネットでも見てればよかったなぁ。

 

 

 

 

 

この大行列はなかなか動きそうにないし。

 

私なんで、こんなところにいるんだろう。

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

私は今までぼんやりと、この大行列を見ていたが、

 

よく考えると、なんだかおかしい。

 

 

 

 

日本人の行列なら大概の人は黒髪か茶髪で、こうしてこれだけの

 

頭が密集すればほぼ真っ黒に見えるはずじゃないかな?

 

 

 

 

 

 

 

でもこの人達の頭は、みんなそろってピンク色??

 

 

 

 

 

それもカラーリング剤で染めたような、のっぺりとした色ではない。

 

髪の毛一本一本、内側からまばゆい蛍光ピンク色をはなち、

 

頭全体が替えたての電球のようにパアァァっと光輝いている。

 

 

 

そう言えば、さやかちゃん、けい子ちゃん、ユウナちゃんの頭も、

 

みんなピンク色だ。

 

 

 

 

 

りえ 「ねえねえ。今まで気づかなかったんだけど、なんでみんな髪の毛ピンクに

 

    したの??」

 

 

 

 

 

それまでみんなでワイワイしていたおしゃべりが、その瞬間に止まる。

 

 

 

 

そして突然目の前が真っ暗になったと思ったら、次の瞬間。

 

表情を無くした3人が、しっかりと前をむいて行列の中に立っていた。

 

 

 

 

 

 

何度声をかけても、みんな何も応えてくれない。

 

不思議に思って、私はこの行列自体をよくよく観察してみた。

 

 

 

 

行列の前の方、ある列から向こう側は

 

みんなで示し合わせたように黄色く光る頭をしている。

 

 

 

遠くてよく見えないが、

 

黄色の頭のある列から先は全員パープル頭のようだ。

 

 

その先は…

 

 

 

 

 

強い光に目がくらんできたのでゴシゴシとまぶたをこすって耐える。

 

 

「妙だなぁ…」

 

 

 

そうブツブツ1人で呟いた。

 

このままではどうしようもないので、私は黄色頭の集団のところまで飛んでいっ

 

た。

 

 

 

すると驚いたことに、黄色の中にも私たち4人組にそっくりなのがいた。

 

藁にもすがる思いで、その人達に話しかける。

 

 

 

 

「ねえ!みんななんで、ここにならんでるの!?」

 

 

 

 

さやか  「なんでって、水をもらうために決まってるじゃない。」

 

 

けい子  「この給水のがしたら、次いつになるかわかんないじゃん。」

 

 

ユウナ  「私の弟まだ赤ちゃんだから…。私が今日お水もらってこなかったら」

 

      「…っ!!えっえっ」

 

 

 

 

ユウナちゃんらしき人が嗚咽をもらしはじめた。

 

今まで黙って聞いていた黄色い髪の毛の私が、この私をじろっとにらみつける。

 

 

 

全身の血の気がひいた。

 

私は、一目散にピンク色の人達のもとへ逃げ帰った。

 

 

 

 

 

ほっと一息。

 

 

 

 

 

ピンク頭の人の中は、奇妙だけど、なんだか心地がいい。

 

これを親近感とゆうのだろうか、とても他人とは思えないような懐かしさを感じる。

 

 

 

 

 

とゆうことは。

 

 

もしかして私の頭もピンク色に光っているのかな?

 

 

そう思って上を見上げてみた。

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

あれあれ。

 

自分の頭が確認できない。

 

 

 

 

必死にあごを上に上げて左右に振ってみるが、頭は一緒に逃げてしまうので、

 

これならどうだ! と、毛をつまんでみようとした。

 

 

 

しかし驚いたことに髪の毛をつかめる腕や手がない。

 

あわてて下をむき、おそるおそる体を確認してみると……、

 

 

 

 

 

そこにはなにもなかった。

 

 

 

「これは…さすがにおかしい。」

 

 

 

―考えを巡らす。

 

 

 

 

しばらくして、私はやっと腑に落ちる解答を見つけることができた。

 

このピンク頭の一面、それ自体が自分なんだ!

 

 

 

 

そうと分かれば。

 

 

 

 

私はなんだかこの状況が楽しくなってきたので、好奇心がわき上がるままに、

 

この広大なピンクの面を波打たせたり、振動させたりして遊んだ。

 

 

 

 

それからある一つのピンク頭に狙いをさだめ、よーく観察することをしてみた。

 

 

 

 

すると突然、

 

 

 

 

 

今まで広大に広がっていた行列がフェイドアウトし、風景が一変する。

 

 

 

 

 

 

 

   おれせんぐらふ

 

 

 

 

 

 

山が見える。

 

 

 

その山は様々な木々が密集した立派な山ではなく、まるで一筆書きのような

 

ひょろっちい山だ。

 

 

 

 

この山を描く作者はよっぽど几帳面みたい。

 

なぜなら寸分違わず、ほとんど線が均一なんだ。

 

 

 

 

「見とれてる場合じゃないや。」

 

 

 

 

私は頭を観察しているところだったので、集中しなおし、凝視する。

 

 

 

 

すると頭は時間が経つにつれ、少しずつ右上に移動していることを発見した。

 

私も逃すまいと、それに合わせて少しずつ移動する。

 

 

 

 

すると不思議なことが起こった。

 

 

 

頭はちゃんと目の前にいるのに、その左下にもたくさんの頭が出現している。

 

その頭たちは目の前の頭と、ほぼ同じ頭のようだ。

 

 

 

 

 

しかし1つ1つ微妙に表情が違って、ある頭は少し泣いているようにも見えるし、

 

別のは笑っていたり怒っていたりしているようにも見える。

 

 

もしかするとあれは、1分前か1時間前か、それとも1年前か、

 

とゆうようにこの頭の過去の姿なんだろうか。

 

 

 

 

 

なるほどなるほど。

 

 

 

 

この現象はもっと遠くから眺めて見てみると、線に見えるはず。

 

そうすると初めに私が見たあの山は、この頭たちが線を引いているのね。

 

 

 

えっと、とゆうことは。

 

この頭は私の一部な訳だから、あの山自体も私ってことになって…

 

 

 

 

うーん、こんがらがってきたぞ。

 

 

 

 

 

私は時間を止めてみて、目の前の頭だけを見つめ続けることに専念した。

 

 

すると未来の頭の姿が、右がわにポコポコボコボコと

 

残像となって現れだした。

 

 

 

「!!」

 

 

 

右がわに現れた頭達は左下の頭たちように、きれいな列をつくって現れたのでは

 

なかった。

 

 

 

右がわの空間をほとんど全てうめつくすように、ものすごい早さで

 

無数に発生している。

 

 

 

 

 

これじゃあこの先、どこに動けばいいか分からないじゃない!こわい!!

 

 

 

私は歯をガタガタさせた。いったん落ち着こう。

 

 

 

 

こうゆう時は下手に動くと迷子になってしまうので、とりあえず初志を貫徹しよう。

 

 

 

 

 

私はなんとも微妙な表情を浮かべている、

 

この目の前の頭をあらためてターゲットとしてさだめ、観察しつくす事に決めた。

 

 

 

 

するとまた突然、風景が一変した。

 

 

 

 

  

 

   きゅうたい

 

 

 

 

 

あのかわいい山は消え、寒々しい空間が現れた。

 

 

 

同時に空間の熱をすべて吸い取っているかのような、すさまじい熱気と圧力を

 

放つ、巨大な球体が現れる。

 

 

 

私はなんだか、だんだん具合が悪くなってきてしまった。

 

 

 

 

体が、握りつぶされているかのように徐々に締め付けられていき、体温も上昇。

 

あつくほてってしょうがない。

 

 

 

 

そうか…、

 

この球体があの頭なら

 

頭はこの私なんだから…ごほっごほっ!

 

 

 

 

私は血管の浮き出た真っ赤っかな顔で、息も絶え絶えになりながら、

 

どうにかこうにか力を振り絞って、

 

自分の目ン玉だけを前方にポーンッと飛ばした。

 

 

 

 

 

球体から解放された目ン玉に軌道修正をかけ、ブレーキを踏みUターンをする。

 

 

 

 

全身全霊をこめて方向転換に成功した目ン玉は、黒目をまっすぐと

 

球体の方へ向けていた。

 

 

 

黒目を凝らして見てみるが、球体の表面はなんにもない

 

ノペーッとしたものにしか見えない。

 

 

 

 

 

「最近パソコンのやりすぎで視力がかなり落ちているみたいだなぁ。

 

細かい部分がなんにも見えないよ。」

 

 

 

 

ではもっと近くで見てみよう!と、思いっきり前に進んだ。

 

 

 

 

それでも目がかすんで何も分からないので、

 

どんどんどんどん球体に近づいていく。

 

 

 

しまいには黒目がピッタリと球体にくっついてしまった。

 

 

 

 

 

「しまった!これじゃあ何にも見えない。」

 

 

 

 

私は自分のバカさ加減にガックシとなったが、黒目をひっつけたことで

 

1つ重要な発見があった。

 

 

 

 

この球体に見えたものは実は平面上の円だったのだ。

 

 

 

 

 

「こうなったら…」

 

 

 

 

私はヤケクソになって円を目ン玉でどんどん押していった。

 

目ン玉は圧迫されていき、涙が次から次へとほとばしる。

 

 

 

 

「いたい!いたい!目ン玉潰れるーッ!!」

 

 

 

 

涙の雫が円の表面に飛び散り、思いがけず不思議な模様を描いた。

 

 

 

「くしゃりッ」

 

 

 

とうとう2つの目ン玉は潰れてしまった。

 

 

 

   めんたま

 

 

 

 

円と同じくペラペラの平面になってしまった目ン玉は、

 

さっきまでの圧力から解放され冷静さをとりもどした。

 

 

 

 

キョロキョロとあたりを見回してみたり、円の表面を優しくなででみたりと、

 

調査を再開している。

 

 

 

円の後ろへまわりこんで裏面を見てみようと考えた目玉達は、

 

左右に分かれてそれぞれのフチまで飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし目玉たちは行けども行けどもフチにたどり着けない。

 

自分たちが飛んでいるスピードより早く、フチは遠くに逃げて行ってしまう。

 

 

 

 

 

途方にくれた目ン玉たちは考えあぐねた。

 

 

 

 

 

 

 

……

 

………!!

 

 

 

 

 

 

2つぶは何かを発見したようだ。

 

さっき自分の涙でつけたシミについてコチョコチョと相談している。

 

 

 

議論は数時間にわたったが、ようやく結論が出たようで

 

 

目玉の片方が円のある一点にぺったりとくっつき、もう片方が大きく息をすって

 

何かを叫んだ。

 

 

 

 

 

「どひゃーん!!!」

 

 

 

 

その瞬間、

 

 

1つぶの目ン玉は、円でさえぎられていた向こう側の世界の空を飛ん

 

でいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひゅーん

 

 

 

 

 

 

 

 

その眼前の世界はとても優しげで、しかし荒涼としていた。

 

広々として大きく澄んだ空の下にはどこまでもどこまでも

 

山谷がそびえ続いている。

 

 

 

 

 

目ン玉は気持ちよさそうに風をきって進んでいた。

 

しかし相方と離ればなれになったその姿はすこし寂しげにも見える。

 

 

 

ここの恐ろしく多様な環境をそなえた谷々には、どこかの場所から無数に発生

 

した、泡のようなものが転がり落ちてたまっているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐるぐるぐる…ポン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほとんどは小っちゃな泡が発生しては消える。

 

たまーに見つける大きな大きな泡な、さらに大きくなろうと猛烈に

 

成長を続けている。

 

 

 

不思議なことに、こんなにたくさんの泡が生まれていても

 

お互いそれぞれの泡たちをのみこんだりはしない。

 

 

 

 

 

この世界には競争メカニズムがないようで、

 

泡同士が出会う前にすきまの空間の方がどんどん大きくなっていく。

 

 

 

それを漠然と眺めていた目ン玉は、

 

 

 

この場所は優しい感じもするけど、寂しい感じもするなぁ。

 

と思った。

 

 

 

どこまでも続く大きな空を一通り泳ぎまわっていた彼は、

 

自分のまわりの空間もそれに合わせて大きくなっていることに気づかずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま高く高く上昇していき、ふと下を見てみると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   あぶくりゅう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが 私 の幻  視した、 あぶ く龍とゆ  うわけで すか な。」

 

 

 

 

 

 

縦横無尽に泳ぎ回りながら、今まで長い話に耳を傾けていた光の粒たちが

 

突如集合し、教祖が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「龍なわけないじゃん。おとぎ話じゃないんだから。」

 

 

 

 

科学者は一気にしゃべり倒して疲れたのか、

 

一息小さくはいて白ぬりのテーブルに置かれたサイダーを一口飲んだ。

 

 

 

 

 

ここはある建物の一室。

 

 

 

 

 

広大な空間は水のような液体で満たされており、

 

その中で無数の小さいものたちが勝手気ままに泳ぎ回っていた。

 

 

 

 

部屋の中心には、重力を無視する形で、悠々と小さなテーブルセットが組まれ、

 

子どもの姿をした科学者がくつろいでいる。

 

 

 

 

 

 

はじめはその存在にとまどっていた小さいものたちも、

 

この科学者が、自分たちにとって透明な存在だと確認してからは心を許し、

 

たまにおしゃべりなどを楽しんだ。

 

 

 

 

彼ら大群はごく稀に、一部がものすごい早さで一カ所に集合する癖がある。

 

 

 

科学者と話すときは、普段禁止とされている人の形となって遊んだ。

 

それはいつも教祖の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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     科学者

 

 

実は透明ではなかった。

 

人類をメガバーズへと引きずり込む、大きな力を開発してしまった子どもたちは、

 

 

歴史上の教訓から、その身に余る力を誰の手にも渡さずに隠し、

 

小さなテロを遂行している。

 

 

 

 

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さやか

 

明るくて人気者。気分屋で泣き虫。

 

りえ

 

責任感が強い優等生。理屈っぽい。

 

ユウナ

 

おっとりしていて優しい。頑固なところも。

 

けい子

 

情にあつい努力家。負けず嫌い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けい子  「やぁーーっとGETしたーー!!ヘビックマ!!!」

 

 

ユウナ  「1時間以上はならんだよね。」

 

 

りえ    「うん、2時間たってるよ。」

 

 

さやか  「もうガマンの限界!!さっそく食べちゃお♪」

 

 

ユウナ  「あ!!ダメだよさやかちゃん。ちゃんとお祈りしなきゃ。」

 

      「それじゃヘビックマの意味ない。」

 

 

 

 

へび年にあわせて、期間限定で発売されたヘビクマドーナツ。

 

 

このドーナツにお祈りをして食べると、願いが叶うと噂が広まり、

 

今女の子たちの中で大流行している。

 

 

 

 

 

さやか  「おっと、今本気で忘れてた;;何お願いしようかな~!?」

 

 

りえ    「私はやっぱりクラブの事にしようかな。」

 

 

けい子  「うーん、私はねぇ…」

 

 

ユウナ  「え!?みんな違うよ。」

 

      「お祈りってゆうのは、祈るとき何にも考えちゃいけないんだよ。」

 

 

けい子  「えええ!!何言ってんのユウナ。」

 

 

ユウナ  「私の家じゃ小さい時からそう教わってきたんだよ。」

 

 

けい子  「マジで言ってるの?」

 

 

りえ    「私もそれはじめて聞いた。」

 

      「でもユウナちゃんがこんなに言うのはめずらしいね。」

 

 

ユウナ  「うん。絶対そうなんだよ!!」

 

      「ねぇ、みんなたくさん買ったじゃん。一個くらいそうしよーよー」

 

 

さやか  「まぁそっか。」

 

      「どっちみちさっき私、なんも考えずに食べるとこだったしww」

 

 

けい子  「分かった、じゃあ付き合うのはこの1個だけだよぉ。」

 

 

 

 

それから私たちは近くの人気の少ない脇道に入り、

 

汚れたコンクリートの地面にサバーラップをお皿にしてドーナツを置いた。

 

 

 

 

輪になった私たちは自分のドーナツの前でかがみこんで合掌をし、

 

お互い目配せをして目をつぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さやか  「じゃあ、いただきまーす!!んまぁーい!!!」

 

 

ユウナ  「ほんとだ!これおいしいねぇ。」

 

 

けい子  「へびがクマをくわえてて、なんだか変な形だけどね。」

 

 

りえ    「たしかに、意味不明だよね。」

 

 

さやか  「あ!!ねぇねぇ。」

 

      「今度の劇の話、タヌキとキツネじゃなくて、ヘビとクマに変えない!?」

 

 

りえ    「!!それ面白いかも。ちょうど今、お話づくり行き詰まってたんだ。」

 

 

ユウナ  「じゃあへびの衣装は、メタリックな感じなんてどうかな?」

 

 

けい子  「カッコイイ!!あ、それ私が着るんだからね。」

 

 

 

 

…… Gray Blackさんの語り  /// リンク↓/// ……

 

 

■この物語のあらすじ

 

 

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