【黒い海】

 

 

 

だれかに愛想を尽かすでもなく

おのれから迸る欲を銭を捨てて僕で充たす

空腹でいたくないのか

洩れる吐息を吸い込んで舌を入れてくる

奥さんとは今月で結婚10周年だそう

 

金になるならどんな性であれ食い尽くす僕は

最低限の手法で心を満たし

仕事をこなす

♂の客はまだ慣れていないから

上とか下とか

さがすほど無い穴を

さらけだして 受け止める

一夜を過ごす別人の僕は二時間で四万らしい

ヤニの張り付いた黄色い歯垢で口内菌をうつしてくるディープ

親ともそう大差ない年齢のおっさんが二十歳かそこらの

♂を見定めて

吐き気のでない夜はなく

ただ別人の僕は正常に同性愛を受け入れる

いきるための金なら そんなに悪くない

ただ 頭の先から芯を捕らえるようなピストンが

別人格を犯すたび 汚れる心をどこで浄化しようか彷徨うだけ

 

街行く人々の「モラルありますよ」の看板をノック

おっさんから茶封筒で手渡された四万から一枚ゆきちを抜き取って

残りを相手に捧げるだけで浄化作用のオンナは喘ぐ

それが一回りもふた回りも歳を重ねるごとに

与える銭は減っていき

甘えの嘘が蔓延って黄色い歯垢を蓄える

 

僕は生きても、死んでいる

性の狭間で息を殺す

 

愛など無いさ

ただ一度でも 蔓延るものなら

抜け出せないだけさ そこから

 

愛など無いさ

ただ一度でも 蔓延るものなら

抜け殻となるまで 吸い尽くして捨ててやる

 

それがしあわせなんだろう

 

 

*カナヅチです。救いのない暗さに ほもぉ が涌きせう。

 

 

 

 

 

 

 

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