【待ち合わせ】

 

 

 

 

「強いていえば、砂丘かな」

 

「砂丘」

 

「鳥取に住んでる中学の頃のツレなんですけど、同窓会の葉書に出席って書いて返信したら、折り返し連絡をよこしてきて、あちこち変わったから案内してやるって。

なんでも、市の観光事業の計画で、砂丘の真横にばかでかいスクリーンを張って砂丘の映像を流すって案がでてるんですって。

自然破壊を促進してることになるって、緑地化計画を進めてる環境保護団体が圧力をかけようとしたところへ、いや砂漠も自然の一部だって派とそれにしても実物が目の前にあるのになんでヴァーチャルかって派と、二種類の反対運動が住民のなかからでてきてですね、デモだの集会だのの花盛りで、鳥取市はたぶん成立いらい最大の活況を呈してるらしいんです」

 

「それで帰省することにしたの? プロの鳥取人だね。砂漠の楽しみかたってのも奥が深い」

 

「こんなときにでもないと、わざわざ見にいこうって気にはならないっすよ。しょせん砂ですから。有給とってしばらくあっちに帰ることにしたんす。でもそんなこと、誰にもいってなかったもんだから、新宿の、高速バスの乗り場に早く着きすぎちゃって、待合室でうとうとしてるときに、とつぜんアナウンスで名前を呼ばれたときにはびっくりしました。鳥取行きのことなんて誰も知らないはずだなんてことには思いもよらないまま、のこのこ案内所まで向かいかけました。そしたら柱の陰でいきなり、えらい力で腕を掴まれたかと思ったら、おれ二、三人の屈強な奴らに囲まれちゃってて、わき腹に尖ったものを押しつけられてたんす。そのまま甲州街道のほうへひっ捕らえられてった挙句、磨きすぎなのか不自然な感じに光ってる車に押しこまれたんです。タオルケットかなんかを頭から被せられてなにも見えないし、関節のところから分解してくんじゃないかってぐらい、身体じゅうが痛いくらい震えだしたら、両側から腕を押さえてた男たちのひとりがさらに力をこめてきて。なぜかそいつ、胸をどきどきさせてました。連れこまれたのはどっかのマンションの一室でした。着くなり屈強な奴らに身体を固定されて安っぽいウイスキーを大量に流しこまれて。黴臭い布団だの服だのエロ本だの空き缶だの弁当の殻だのが散らかってる部屋のあちこちに渦巻きみたいな模様が広がって、屈強な奴らのサイズが虫くらいにちいさくなったかと思うと天井を破るくらい膨張したりしてるのが見えたところで、記憶が途切れました。気がつくとおれはすっ裸で、汗だくになって床に倒れてました。頭が釘でもぶちこまれてるみたいに痛むわ、酸っぱい液が咽喉までこみあげてくるわで、とりあえずトイレに行こうとしたら、生温かいものにけ躓いたんすよ。屈強な奴らのひとりの、ぞうりの裏みたいな顔したおっさんが、全裸で寝転がってるんす。同じ敷布団の上で」

 

「おまえそれ」

 

「そういうことはなかったみたいっす。なんかありゃ、身体に残ってるはずですからね。必死で這いずってってトイレでげえげえやってたら、いきなりうしろからひっくり返されて、いきなり足にパンプスを履かされたんす。全裸にパンプスの状態で、またべつの蓮根みたいな体格の奴に抱えられてもいちど部屋まで連れ戻されましたよ。なにされんのかと思ったら、蓮根の奴、全裸のまま仰向けにひっくり返って、腹を踏んでくださいって、絞りだすような声で」

 

 

 

つづく

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