【女子高生】

 

 

 

 

微睡の花盗人が見る夢。

 

・・・

 

西の国の古くから伝わる言葉、ラテン語。

カルペ・ディエム(carpe diem)のカルペは摘む。

何を摘む?花を摘む、特にバラを。

diemは、日。一日一日の日めくりカレンダーのように風を舞う花びら。

 

翻って、東の国の古くから伝わる言葉。

勧酒、于武陵の漢詩、『厄除け詩集』の井伏鱒二の和訳。

「勧 君 金 屈 巵

 満 酌 不 須 辞

 花 発 多 風 雨

 人 生 足 別 離」

 

コノ盃ヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ

花ニ嵐ノタトヘモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ

 

現代の日本、漫画の絵。

                

最遊記外伝の満開の桜。無数に舞う花びら。

桜はバラ科サクラ属、梅も同様。

 

・・・

 

花盗人は追憶の彼方へ。

 

さよならだけが 人生ならば 人生なんか いりません

と寺山修司は歌ったらしい。

 

ゴータマシッダルタも言う、愛別離苦、怨憎会苦。

 

「ああ、まったくだ」そう言いながら花盗人はため息を漏らす。

 

どうせいなくなるのなら、最初から会わなければよかったと、

いっそ殺してしまおうか、それも嫌なら自分を消そう。

この身など破滅してしまえ、世界も、我が身もろとも滅んでしまえ

 

破壊、破滅、死に惹かれる。

そこに、生きる意志はない。

死に至る病、絶望の闇の囚われ人。

 

・・・

 

闇を蠢く者たちのもとへ

絶望の鎌がやってくる。

鎌を持った死神が追いかけてくる。

草を刈り取るように、次々と人首を刈りながら。

 

やがて、死神に追いつかれ、もはや逃げられない。

鋭い鎌が襲いかかる。

なぜかスローモーションに見える。

死の恐怖と逃げ疲れて諦め気味、もはや投げやりな感情、

ごちゃごちゃに入り混じった状態。

 

その混濁した思いのさ中に、ふわりと浮かぶ幻

いつか見た光景、いつか聞いた声・・・

どこか懐かしい、どこがどうって聞かれてもよくはわからない、

でも、知っている。むかし、いつか、どこかで・・・

 

記憶は風の中に。

 

菅原道真も歌う、

東風(こち)吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ。

 

ただ、ただ、ゆかしい。みたい、ききたい、しりたい、ほしい。

ゆかしい。そこから、生きたい。

命の意志が輝きを放つ、光が照らす。

いつの間にか闇ははれていた。

 

・・・

 

さっきまでぽわ~っとしていた花盗人は

今日も花びらを摘もうと手をのばしている。

 

桜だろうか、梅だろうか、薔薇だろうか・・・

 

ロータス、蓮にも劣らぬ、甘い香りに包まれながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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